ルック・オブ・サイレンス
「あなたはなぜ、兄を殺したのですか————」
“殺人”という大罪を犯してもなお、なぜ彼らは罪の意識なく生きられるのか?100 万人規模の大虐殺に隠された“責任なき悪”のメカニズム。
1965年、インドネシア。スカルノ大統領(当時)親衛隊の一部がクーデター未遂事件を起こす。このクーデターの収拾にあたった軍部のスハルト少将(後のインドネシア第二代大統領)らは、事件の背後にいたのは共産党だとし、西側諸国の支援も得て65~66年にインドネシア各地で100万とも200万ともいわれる人々を“共産主義者”だとして虐殺。以来彼らは今も、権力の座に就き続けている。映画作家ジョシュア・オッペンハイマーは、北スマトラ州の州都である大都市・メダンで虐殺の被害者家族を取材するも、当局の妨害により一旦は断念。しかし被害者たちの助言により加害者側を取材して『アクト・オブ・キリング』を撮影した。その後、本作の主人公アディの強い要請で、彼が兄を殺した加害者に直接会いに行く現場に同行。その過程を、 家族の葛藤を交えて記録したのが本作である。
STORY|ストーリー
虐殺で兄が殺害された後、その弟として誕生した青年アディ。彼の老いた母は、加害者たちが今も権力者として同じ村に暮らしているため、半世紀もの間、亡き我が子への想いを胸の奥に封じ込め、アディにも多くを語らずにいた。2003 年、アディはジョシュア・オッペンハイマー監督が撮影した、加害者たちへのインタビュー映像を目にし、彼らが兄を殺した様子を誇らしげに語るさまに、強い衝撃を受ける。
「殺された兄や、今も怯えながら暮らす母のため、彼らに罪を認めさせたい―――」
そう願い続けたアディは、2012 年に監督に再会すると、自ら加害者のもとを訪れることを提案。しかし、今も権力者である加害者たちに、被害者家族が正面から対峙することはあまりに危険だ。眼鏡技師として働くアディは、加害者たちに「無料の視力検査」を行いながら、徐々にその罪に迫る。加害者たちの言葉から浮かび上がるのは、 “責任なき悪”のメカニズム。さらには、母も知らなかった事実が明らかにされてゆくのだった。半世紀もの間、恐怖によって“沈黙”を強いられてきた被害者たちの想いが、いま溢れ出す…。
CAST&STAFF|キャスト&スタッフ
監督 | ジョシュア・オッペンハイマー |
共同監督 | 匿名 |
製作 | シーネ・ビュレ・ソーレンセン |
製作総指揮 | ヴェルナー・ヘルツォーク / エロール・モリス / アンドレ・シンガー |
撮影 | ラース・スクリー |
INFORMATION|作品情報
2014 年/デンマーク・インドネシア・ノルウェー・フィンランド・イギリス合作/インドネシア語・ジャワ語/103 分/ビスタ/カラー/DCP/5.1ch
日本語字幕:岩辺いずみ/字幕監修:倉沢愛子
(c) Final Cut for Real Aps, Anonymous, Piraya Film AS, and Making Movies Oy 2014