Transformer HOME > 劇場公開作 > DAU. ナターシャ
STORY|ストーリー
ソ連の某地にある 秘密研究所。その施設では多くの科学者たちが軍事的な研究を続けていた。 施設に併設された食堂で働くウェイトレスのナターシャはある日、研究所に滞在していたフランス人科学者と 肉体関係を結ぶ。 言葉も通じないが、惹かれ合う2人。しかし、 当局から呼び出された彼女は、冷酷な KGB 職員の待つ暗い部屋に案内され、スパイ の容疑をかけられ厳しい追及を受けることになる…。
ロシアの奇才イリヤ・フルジャノフスキーは処女作『4』が各国の映画祭で絶賛を浴
びると、 「史上最も狂った映画撮影」 と 呼ばれた本プロジェクトに着手。 それは、 いまや忘れられつつある 「ソヴィエト 連邦」 の記憶を呼び起こすために、 「ソ連全体主義」の社会を完全に再現する という 前代未聞の試みだった。
実にオーディション人数約 40 万人、 衣装4万着、 欧州史上最大の1万2千平米のセ
ット 、 主要キャスト 400 人、エキストラ1万人、 撮影期間 40 ヶ 月、 35mm フィルム撮影のフッテージ 700 時間……莫大な費用と 15 年もの歳月をかけて本作を完成させた。
タイトルの『DAU』とは 1962 年にノーベル物理学賞を受賞したロシアの物理学者のレ
フ・ランダウからとられている。彼はアインシュタインやシュレーディンガーと 並び称される ほどの優秀な学者であると同時に、スターリンが最高指導者を務めた全体主義時代において、自由恋愛を信奉し、 スターリニズムを批判した罪で逮捕された経歴も持つ。本作『DAU. ナターシャ』はその膨大なフッテージから創出された映画化第一弾であり、ランダウが勤めていた物理工学研究所に併設されたカフェのウェイトレス、ナターシャが主人公となる。本作でスカウトされた新人ナタ ーリヤ・ベレジナヤが演じるナターシャの目を通し、観客は独裁の圧制のもとで逞しく生きる人々と、美しくも猥雑なソ連の秘密研究都市を体感していくことになる。
撮影は徹底的にこだわって行われ、キャストたちはセット と して当時のままに再建さ れた秘密研究都市で約2年間にわたり実際に生活し、カメラは至るところで彼らを撮影した。本作には本物のノーベル賞受賞者、元ネオナチリーダーや元 KGB 職員なども参加。町の中ではソ連時代のルーブルが通貨として使用され、出演者もスタッフも当時のものを再現した衣装や食料で生活、毎日当時の日付の新聞が届けられるという徹底ぶりで、 出演者たちは演じる 役柄になりき ってしまい、実際に愛し合い、憎しみ
合ったという。このプロジェクトは 2019 年 1 月にパリ、ポンピドゥ ー・センターで展覧会という形でお披露目され、様々な形でアート作品として人々に提示され、大反響を呼んだ。 さ らに、すでに劇場映画第二弾『DAU. Degeneration(原題)』も完成しており、これからどれだけ『DAU』 の世界が広がっていくのか、それは誰にも分らない。『DAU. ナターシャ』は巨大な迷宮の入り口であると同時に当時の政権や権力がいかに人々 を抑圧し、 統制したのか――その実態と構造を詳らかにし、その圧倒的な力に翻弄される人間の姿を生々 しく 捉えていく。
この壮大な実験の果てに待ち受けるのは――?
監督・脚本 | イリヤ・フルジャノ フスキー / エカテリーナ・ エルテリ |
出演 | ナターリヤ・ ベレジナヤ / オリガ・シカバルニャ / ウラジーミ ル・アジッポ |