監督・撮影:アレクサンダー・ナナウ『トトと二人の姉』 / 出演:カタリン・トロンタン、カメリア・ロイウ、テディ・ウルスレァヌ、ヴラド・ヴォイクレスクほか / 2019年 / ルーマニア・ルクセンブルク・ドイツ / ルーマニア語・英語 / 109分 / ビスタ / カラー / 5.1ch / 原題:Colectiv / 後援:在日ルーマニア大使館 / 配給:トランスフォーマー © Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019
「映画は世界を変えることができるか?」と聞かれることがある。恐らくそれはないが、中には人に二度考えさせたり、深く考えさせたりする力を持つ作品がある。私たちは、誰もが自分の意見を言うことに囚われた、偏った社会に生きているようだ。本作には「自分がすでに知っている真実はひとつしかない」という自信を失わせる力があると思う。
2015年10月30日、東欧ルーマニア・ブカレストのクラブ「コレクティブ」で実際に起こった火災を発端に、明らかになっていく製薬会社や病院、そして政府や権力へと繋がっていく衝撃的な癒着の連鎖。本作は、命よりも利益や効率が優先された果てに起こった国家を揺るがす巨大医療汚職事件の闇と、それと対峙する市民やジャーナリスト達を追った、フィクションよりもスリリングな現実を捉えたドキュメンタリー映画だ。
監督は、世界各国の映画祭で上映され数多くの賞を受賞した『トトとふたりの姉』のアレクサンダー・ナナウ。地道な調査報道を続けるジャーナリストを追う前半から一転、映画の後半では熱い使命を胸に就任した新大臣を追い、異なる立場から大事件に立ち向かう人達を捉えていく。
“まるでリアル『スポットライト 世紀のスクープ』だ”とも評される本作は、命の危険を顧みず真実に迫ろうとするジャーナリストたちの奮闘に思わず手に汗握るだけでなく、日本を始め世界中のあらゆる国が今まさに直面する医療と政治、ジャーナリズムが抱える問題に真っ向から迫っており、ドキュメンタリーでありながら本年度アカデミー賞のルーマニア代表として選出され、ルーマニア映画としてはじめてのオスカーノミネートにして国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートを果たした。そのほか、世界各国の映画祭で32の賞を獲得し、50ものノミネートを果たしている。
また、非英語映画でありながら、タイム誌が選ぶ2020年ベスト映画の第2位に選出されたほか、ローリングストーン誌では第1位に選出され「惨劇、隠蔽、暴露。今年最高のドキュメンタリーだ」と最高の賛辞を得た。ヴァニティ・フェア誌では第3位、インディ・ワイアーでは第3位となり「ジャーナリズムについて描く映画史上、最も偉大な作品だ」と評されたほか、「これほど現代社会を象徴する映画はない」(ワシントン・ポスト紙)とも評されている。さらに、映画レビューサイト、ロッテントマトでは満足度99%(7月19日時点)をたたき出し、まさに現代を代表する1作として圧倒的な評価を得ている。
2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名まで膨れ上がってしまう。カメラは事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長を追い始めるが、彼は内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる保健省大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが…。
1979年、ルーマニア生まれのドイツ系ルーマニア人の映画監督。ベルリン映画テレビアカデミー(DFFB) で演出を学ぶ。ドキュメンタリー映画『THE WORLD ACCORDING TO ION B (原題)』(09) で、2010年に国際エミー賞を受賞。長編ドキュメンタリー映画『トトとふたりの姉』(14) は、2015年欧州アカデミー賞にノミネートされる。同作は広く国際的に配給され、世界中の映画祭で上映された。フランス・ドイツ合作のソニア・クロンルンド監督のドキュメンタリー映画『NOTHINGWOOD(原題)』(17) で撮影監督を務める。同作はカンヌ国際映画祭2017の監督週間でプレミア上映された。最新の長編ドキュメンタリー『コレクティブ 国家の嘘』は、ヴェネツィア国際映画祭2019のオフィシャルセレクション (アウト・オブ・コンペティション)でプレミア上映され、ルーマニア映画として初めてのアカデミー賞ノミネートをもたらした。サムサ・フィルム(ルクセンブルク) とHBOヨーロッパとの共同制作作品。
2021年Gopo賞
最優秀長編映画賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞
2021年シネマ・アイ・オナーズ・アワード
ジ・アンフォゲッタブル賞、最優秀ノンフィクション長編賞
2021年ニューメキシコ映画評論家
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2021年バンクーバー映画批評家サークル
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2021年AARP Movies for Grownupsアワード
最優秀外国映画賞
2020年ナショナル・ボード・オブ・レビュー
外国語映画トップ5選出
2020年全米映画批評家協会賞
最優秀外国語映画賞
2020年サテライト賞
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年セントルイス映画批評家協会賞
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年トロント映画批評家協会賞
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年ロンドン映画批評家協会賞
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年女性映画批評家オンライン協会賞
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年サンフランシスコ・ベイエリア
映画批評家サークル
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年ボストン映画批評家協会賞
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年ドカビブ映画祭
最優秀国際映画賞
2020年ドッグヴィル国際ドキュメンタリー映画祭
審査員賞
2020年ドクフェス映画祭
真実賞
2020年ヨーロッパ映画祭
ヨーロッパ・ドキュメンタリー賞
2020年ハンプトン国際映画祭
最優秀ドキュメンタリー賞
2020年レザルク・ヨーロッパ映画祭
最優秀撮影賞
2020年人権に関する国際映画祭とフォーラム
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年ルクセンブルク市映画祭
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2020年モントクレア映画祭
特別審査員賞
2020年ワンワールド国際人権
ドキュメンタリー映画祭
特別審査員賞
2020年ソフィア国際映画祭
特別審査員賞国際ドキュメンタリー映画賞
2020年トロムソ国際映画祭
ドンキホーテ賞
2019年ラロッシュシュルヨン国際映画祭
特別審査員賞
2019年モンペリエ地中海映画祭
最優秀ドキュメンタリー映画賞
2019年チューリッヒ映画祭
最優秀国際ドキュメンタリー映画賞
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