バビロンの陽光
生まれたとき、父はすでに居なかった。
わずかな希望を胸に、少年の旅が始まる…。
度重なる戦争により、夥しい数の行方不明者や、身元不明のままの遺体を今もなお抱える国、イラク。バグダッド出身で、ヨーロッパ各国で映像を学びキャリアを積んできたモハメド・アルダラジー監督は、祖国の現状を伝えるため、2003年長編第一作を制作。何者かに襲われ誘拐されるなどの危険な目に遭いながらも完成させた作品は高い評価を受け、第二作である本作に繋がった。
しかし再び祖国に戻り撮影を開始したものの、前作同様に制作は困難を極め、幾度となく中断に追い込まれた。そんな中にあっても、監督の熱意が米・サンダンス映画祭、イギリス、フランス他のプロデューサーの心を動かし、各国映画人支援の下、作品は遂に完成。
ベルリン映画祭パノラマ部門に出品され、二部門を同時受賞。心揺さぶるラストシーンでは、会場を感動の涙で包み込み絶賛され、アカデミー賞®外国語映画賞イラク代表作品にも選出された。
STORY|ストーリー
2003年、イラク北部クルド人地区。フセイン政権の崩壊から3週間後、戦地に出向いたまま戻らない息子を探すため、老いた母は旅に出た。12歳の孫アーメッドを連れて。生後間もなかったアーメッドは、父の顔さえ知らない。親子を繋ぐのは、父が残した縦笛だけだ。わずかな現金しか持たない祖母と少年は、ヒッチハイクをしながら、バスを乗り継ぎ、砂漠の中を進んでいく。クルド語しか解さない祖母を、時折片言のアラビア語で助けるアーメッド。気のいいトラックの運転手、貧しくても逞しく生きる路上の少年、そして、クルド人殺戮に加担し心に傷を負った元兵士…、2人はさまざまな出会いと別れを繰り返し、過酷な現実に押しつぶされそうになりながらも、やがて訪れる運命の瞬間に一歩一歩近づいていく…。
CAST&STAFF|キャスト&スタッフ
監督 | モハメド・アルダラジー |
製作 | イザベル・ステッド/アティア・アルダラジー/ディミトリ・ドゥ・クレルク |
脚本 | ジェニファー・ノリッジ/モハメド・アルダラジー/ミトハル・ガズィー |
撮影 | モハメド・アルダラジー/デュライド・アルムナジッム |
音楽 | カード・アッチョーリ |
出演 | ヤッセル・タリーブ/シャーザード・フセイン/バシール・アルマジド |
INFORMATION|作品情報
2010/イラク・イギリス・フランス・オランダ・パレスチナ・UAE・エジプト合作/アラビア語・クルド語/90分/35mm/シネスコ/カラー/ドルビー5.1chSRD/日本語字幕:岩辺いずみ
原題:Son of Babylon 後援:ブリティッシュ・カウンシル
© 2010 Human Film, Iraq Al-Rafidain, UK Film Council, CRM-114