Transformer HOME > 映画美術 > 磯見俊裕
彼の空間では物さえも登場人物に反応し感情を持って、観客に物語を伝える。 磯見の空間演出が際立っているのは、彼の生への情熱と周囲の世界への入念な観察によるものだ。 彼は決して大げさな演出はせず、代わりに登場人物たちの様々な行動や状況に対する適切な空間的言語を作り出す。 形式もスタイルも違うたくさんの監督たちと仕事をしてきたにもかかわらず、磯見の空間には一貫した特徴が見受けられる。 彼は、空間の中に意味ありげなメッセージを与えることに頭を働かせるというよりはむしろ、登場人物たちの、周囲の環境に対するリアクションの流れを強調することに集中している。 彼の空間では物さえも登場人物に反応し、感情を持って、観客に物語を伝えるのだ。
「誰も知らない」(2004)では、磯見は大人に捨てられた子供たちがいかに生を維持していくかを、空間と小さな物々をデザインすることで表現した。 注意深い認識を通して、そのように洗練された感情を表現することは、磯見の突出した才能である。 彼は歴史的な空間を創作する際にも、似たような方法を用いている。 空間をできるだけ自然に見せることを望むのだ。 映画の中に空間を創り上げることは、人工的な作業であるだろうが、彼は生と感情を空間の中に持ち込むことを、決して諦めない。
磯見は「ワンダフルライフ」(1998)において実に素晴らしい仕事をやってのけ、美術監督としての類い稀なスタイルを露わにした。 「ワンダフルライフ」は、人生における最も美しい瞬間を蘇らせるという非現実的なアイディアに基づいている。 全編を通じて、磯見はこう語りかけているようであった。 「過ぎた瞬間を蘇らせることなど不可能であるが、 それでもその瞬間を取り戻そうとする行動は、それ自体が価値あることである。 なぜなら人生には様々な意味があると、人は気付いているから」と。
美術監督として、磯見は人工的な空間を建造するよりもいくつもの小さな生の感情を結びつけることでリズムを創り上げる。 彼は、日常生活に於ける神秘を注意深く観察することによって周囲の世界や宇宙を理解しようと試みる、稀なる美術監督なのだ。 (Bae Yoon-ho:ぺ・ユンホ)
1997 |
|
---|---|
1998 |
|
2000 |
|
2001 |
|
2004 |
|
2006 |
|
2008 |
|
1987 |
|
---|---|
1988 |
|
1989 |
|
1990 |
|
1991 |
|
1992 |
|
1994 |
|
1995 |
|
1996 |
|
1997 |
|
1998 |
|
1999 |
|
2000 |
|
2001 |
|
2002 |
|
2003 |
|
2004 |
|
2005 |
|
2006 |
|
2007 |
|
2008 |
|
2009 |
|
2010 |
|
2011 |
|
2012 |
|
2013 |
|