AWARD
INTRODUCTION
韓国から小樽へ。降り積もる雪の下に隠されていたのは、母とその初恋の女性が閉じ込めた恋の記憶—
東アジアに生きるふたりの女性の愛を描き、世界中で絶賛されたラブストーリー
2019年、第24回釜山国際映画祭のクロージングを飾り、2020年には韓国のアカデミー賞ともいえる青龍映画賞で最優秀監督賞と脚本賞をW受賞した映画『ユンヒへ』の監督・脚本を手掛けたのは、長編2作目となる新鋭のイム・デヒョン。岩井俊二監督の『Love Letter』にインスパイアされた本作ではロケ地を北海道・小樽に選び、2人の女性達が心の奥にしまってきた恋の記憶を描き出す。主人公のユンヒを演じるのは長年ドラマや映画で活躍し、昨年韓国で放送された大ヒットドラマ「夫婦の世界」では数々の賞も受賞したベテラン俳優のキム・ヒエ。日本人女性ジュンに『野火』や『ストロベリーショートケイクス』の中村優子。ユンヒの娘セボムに元I.O.Iのキム・ソへ、セボムのボーイフレンドにソン・ユビン、ジュンの伯母に木野花、ジュンを慕うリョウコに『由宇子の天秤』の瀧内公美、ユンヒの元夫に「梨泰院クラス」などのユ・ジェミョンが配された。
登場人物の心情に優しく寄り添うような小樽の美しい冬景色と、ミステリアスに紡がれるユンヒの恋。20年前に、一体何があったのか? 控えめな言葉と降り積もる雪に隠されながらも、真実は物語が進むにつれて徐々に輪郭をあらわしていく……
これまで韓国では正面から描かれることが少なかった中年女性の同性愛と彼女達が経験してきた抑圧を真摯に描き出し、韓国のLGBTQ+コミュニティや女性達から熱狂的な支持を受け、2019年の釜山国際映画祭では、セリーヌ・シアマ監督の『燃ゆる女の肖像』やグザヴィエ・ドラン監督の『マティアス&マキシム』といった作品が顔を並べる中、クィアカメリア賞を受賞。同映画祭の審査員からは、「久しぶりに映画を見て、胸躍る経験をした。それが韓国で作られた女性たちの愛の物語を描いた映画だからなおさらだ」と絶賛された。尚、日本では2020年11月、第6回大阪韓国映画祭にて同タイトルで上映され、熱狂的に迎え入れられた。韓国で“満月団”と呼ばれるファンを生み出し、多くの映画ファンや批評家から絶賛と共感を集めた珠玉のラブストーリーがいよいよ日本上陸となる。
STORY
DIRECTOR
監督の言葉
―イム・デヒョン
イム・デヒョン(監督・脚本)
CAST
キム・ヒエ(ユンヒ役) 1967年4月23日生まれ。10代後半からモデルとして活動を始め、1984年映画「わが愛しのチャング」でデビュー。これまで数多くの映画やドラマに出演している。代表作にチャン・ヒョクと共に主演を務めたドラマ「マイダス」(2011)、2014年に映画『優しい嘘』、ドラマ「密会」で立て続けにユ・アインと共演。2020年には、韓国JTBCのドラマ「夫婦の世界」に出演。韓国ケーブルテレビ史上最高視聴率となる28.4%を記録した。この作品で第56回百想芸術大賞TV部門女性最優秀演技賞を受賞。待機作には、映画『神と共に』シリーズのキム・ヨンファ監督の次期作『ザ・ムーン(仮題)』やチョジ・ヌンとの共演作『デッドマン』など話題作が続く。
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中村優子(ジュン役) 1975年1月7日生まれ。福井県出身。2001年に『火垂』で演じた主人公のストリッパー役が国内外で絶賛され、ブエノスアイレス国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞。主な出演作として、映画『血と骨』(04)、『ストロベリーショートケイクス』(06)、『クワイエットルームにようこそ』(07)、『クヒオ大佐』(09)、『鉄男 THE BULLETMAN』(10)、『ギリギリの女たち』(12)、NHK連続テレビ小説「カーネーション」(12)、『百瀬、こっちを向いて。』(14)、『野火』(15)、『太陽』(16)、BBC Two/Netflixドラマ『GIRI/HAJI』(19)、などがある。 |
キム・ソへ(セボム役) 1999年7月19日生まれ。2016年、オーディション番組を経て期間限定のアイドルグループ“I.O.I”のメンバーとしてデビュー。グループ解散後、バラエティ番組に出演する一方、MBNのドラマシリーズ「最高のチキン~夢を叶える恋の味~」(19)で主演を務めるなど、活動の幅を広げる。本作がスクリーンデビューとなる。
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ソン・ユビン(ギョンス役) 2000年7月25日生まれ。2011年、ユ・アイン、キム・ユンソク主演の『ワンドゥギ』で主人公ワンドゥギの子供時代を演じ、スクリーンデビュー。その後、数多くのテレビドラマ、映画に出演。これまでの出演作に、「グッドワイフ ~彼女の決断~」(16)、『隻眼の虎』(15)、『君の誕生日』(19)などがある。
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木野花(マサコ役) 1948年1月8日生まれ。1974年に女性だけの劇団「青い鳥」を結成。 80年代小劇場ブームの旗手的な存在となる。86年、同劇団を退団。 現在は、女優・演出家として活躍中。 主な映画出演作に『恋人たち』『閉鎖病棟-それぞれの朝-』『MOTHER マザー』など。2019年、『愛しのアイリーン』での演技を高く評価され、第92 回キネマ旬報助演女優賞を受賞。
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瀧内公美(リョウコ役) 1989年10月21日生まれ。2014年、『グレイトフルデッド』にて映画初主演。2017年、『彼女の人生は間違いじゃない』で日本映画プロフェッショナル大賞新人女優賞受賞。 2020年、『火口のふたり』で第93回キネマ旬報主演女優賞を受賞。2021年は話題の独立映画『由宇子の天秤』に主演するなど、いま最も勢いのある女優として活躍中。
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薬丸翔(リュウスケ役) 1990年10月25日生まれ、東京都出身。2005年デビュー。映画『炬燵猫』(06)で映画初出演をはたし、以後舞台、映画、ドラマと活躍の幅を広げている。近年の主な出演作に舞台『外の道』(21)『獣の柱』(19)、映画『聖地X』(21)『愛なき森で叫べ』(19)、ドラマ「微笑む人」(20)、「しろときいろ~ハワイと私のパンケーキ物語~」(18)などに出演。
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ユ・ジェミョン(インホ役・特別出演) 1973年6月3日生まれ。舞台俳優として活躍後、『黒水仙』(01)で映画デビュー。以後、ドラマや映画作品に多数出演する演技派。作品ごとにがらりと雰囲気を変えるカメレオン俳優として有名であり、ドラマでは「梨泰院クラス」(20)、「ヴィンチェンツォ」(21)の他、「秘密の森」(17)、「刑務所のルールブック」(17)などに出演。映画では、『インサイダーズ/内部者たち』(15)、『隻眼の虎』(15)、『風水師 王の運命を決めた男』(18)、『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』(19)、『野球少女』(19)、『ビースト』(19)などの出演作がある。
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COMMENT
秘密は[人を寂しくさせる]のだろうか。 秘密は思い出となって 美しく育っていくとは限らないが、 秘密はときにやさしく 雪を溶かすほどに あたたかいことを知るだろう。
篠井英介【俳優】 |
旅先で買うイヤリング、 はじめて入った店、 踏みしめる雪道、 車窓から眺める景色、 すべての瞬間に「互いの不在」が 現在進行形で降り積もり、 その重さに言葉を失う。
松田青子【作家】 |
「ユンヒへ」。 いい映画でした。 暖かい気持ちになりました。 雪は降り続くとしても。
小島秀夫【ゲームクリエイター】 |
ぼろぼろに泣いてしまった。 降りしきる雪のように あなたへの想いはいつまでも止まない。
深緑野分【作家】 |
韓国と日本、 離れていても、 同じ瞬間に前を向いて 歩もうとする人たちの存在は、 誰かの道をも明るく 照らしてくれているように 思えました。
西森路代【ライター】 |
雪の海沿いを走る あの列車の窓から見える景色は 誰のものでもなくて、 だから誰もがいつかと 夢見ることができる。
杉田協士【映画監督/『春原さんのうた』】 |
今の時代だったら 2人はまた違ったのだろうか。 手紙が胸が苦しくなるほど惹き込む。 ラストのユンヒの表情に救われた。
笛木優子【女優】 |
時が流れ、 人々がおこす時代の変化の中で、 今があること、 そして未来がくることに、 強い希望とあたたかさを感じる映画でした。
あかたちかこ【大学教員】 |
私にも、 永遠に出せない手紙がある。 その手紙はついに出すことなく 雪と同じ白い燃え殻になってしまった。 私達もユンヒ達と同じ時代を生きている。 せめて、 私達のこの世代を越えた人生の旅が、 どうか幸せに続く道でありますようにと 願わずにいられない。
イシヅカユウ【モデル / 女優】 |
胸の内を綴る手紙がふたつ。 そこには在りし日の輝きと 後悔が揺らめいて、 思い出迷子の独りぼっち同士は 邂逅を静かに求め合う。 これは雪溶けを待つかのような 遠い目のふたりが、 自分の人生を取り戻していく物語である。
とんこつたろう【ラジオパーソナリティ】 |
イラストは私の大好きなシーンを描きました。 ユンヒとセボム。 ユンヒは劇中でおりに触れて「寂しさ」という言葉で描写される女性です。 その寂しさがどこから来るのか、 彼女はなぜいつも感情を押し殺したように生きているのか、 それらが少しずつわかっていくと、 傍観者だったはずの私も、 ユンヒと心が重なっていくように感じます。 そんなユンヒの一番の支えになっているのがセボム。 彼女の、 春の新芽のようなしなやかで若い魂が誰も彼もを微笑ませ、 物語の先に希望があることを指し示します。
多田由美【漫画家】 |