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STORY|ストーリー
「ベラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じて祖国を脱出した、幼い子どもを連れたシリア人家族。しかし、亡命を求め国境の森までたどり着いた彼らを待ち受けていたのは、武装した国境警備隊だった…。
本作は、ベラルーシ政府がEUに混乱を引き起こす狙いで大勢の難民をポーランド国境へと移送する<人間兵器>とよばれる策略に翻弄された人々の過酷な運命を、シリア人難民家族、支援活動家、国境警備隊の青年など複数の視点から描き出す群像劇だ。安全な生活を送れると信じてポーランドへ渡ってきたシリア人家族。しかし、ようやく辿り着いた直後、武装した警備隊から非人道的な扱いを受けた上にベラルーシへ送り返され、そのベラルーシからも再びポーランドへ強制移送されるという、どちらの国からも難民を押し付け合うような暴力と迫害に満ちた過酷な状況を強いられ、終わりのない無限地獄のような日々を過ごすことになる…。
監督は、3度のオスカーノミネート歴を持ち『ソハの地下水道』『太陽と月に背いて』など数々の名作を世に送り出してきたポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド。友人のカメラマングループと国境の写真を撮影するなど難民をめぐる問題を追っていた彼女は、この事態を受け情報が遮断された2021年に「国境に行くことができなくても、私は映画を作ることができる。政府が隠そうとしたものを、映画で明かそう」と本作の制作を決意したと語る。政府や右派勢力からの攻撃を避けるためスケジュールや撮影場所は極秘裏のうちに、24日間という驚異の猛スピードで撮影を敢行。隠蔽されかけた国境の真実を、大量のインタビューや資料に基づき、心を揺さぶる人間ドラマとして映像化を果たした執念の一作だ。実際に難民だった過去や支援活動家の経験を持つ俳優をキャスティングしたことで、ドキュメンタリーと見紛うほどの圧倒的なリアリズムが産み出されている。2023年ヴェネチア映画祭コンペティション部門でお披露目されると、その複雑かつスリリングで息をもつかせない展開が、モノクロームの圧巻の映像美とともに絶賛を集め、審査員特別賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭の観客賞をはじめ、これまでに17の賞を受賞、20のノミネートを果たし(2024年2月27日現在)世界各国の映画祭で高い評価を獲得している。
監督 | アグニエシュカ・ホランド |
出演 | ジャラル・アルタウィル、マヤ・オスタシェフスカ |