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レビュー&受賞歴
 
イントロダクション
 
前代未聞の上映妨害…政府が<隠したがった真実>ポーランドの巨匠がいま全世界に放つ、鬼気迫る告発!
前代未聞の上映妨害…政府が<隠したがった真実>ポーランドの巨匠がいま全世界に放つ、鬼気迫る告発!
本作は、ベラルーシ政府がEUに混乱を引き起こす狙いで大勢の難民をポーランド国境へと移送する<人間兵器>とよばれる策略に翻弄された人々の過酷な運命を、シリア人難民家族、支援活動家、国境警備隊の青年など複数の視点から描き出す群像劇。
監督は、3度のオスカーノミネート歴を持ち『ソハの地下水道』『太陽と月に背いて』など数々の名作を世に送り出してきたポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド。友人のカメラマングループと国境の写真を撮影するなど難民をめぐる問題を追っていた彼女は、政府が国境を閉鎖したことで情報が遮断された2021年に「国境に行くことができなくても、私は映画を作ることができる。政府が隠そうとしたものを、映画で明かそう」と本作の制作を決意したと語る。政府や右派勢力からの攻撃を避けるためスケジュールや撮影場所は極秘裏のうちに、24日間という驚異の猛スピードで撮影を敢行。隠蔽されかけた国境の真実を、大量のインタビューや資料に基づき、心を揺さぶる人間ドラマとして映像化を果たした執念の一作。
実際に難民だった過去や支援活動家の経験を持つ俳優をキャスティングしたことで、ドキュメンタリーと見紛うほどの圧倒的なリアリズムが産み出されている。2023年ヴェネチア映画祭コンペティション部門でお披露目されると、その複雑かつスリリングで息をもつかせない展開が、モノクロームの圧巻の映像美とともに絶賛を集め、審査員特別賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭の観客賞をはじめ、これまでに18の賞を受賞、20のノミネートを果たし(2024年3月7日現在)世界各国の映画祭で高い評価を獲得している。
国際的な圧倒的高評価の一方で、当時のポーランド政権は本作を激しく非難し、公開劇場に対して上映前に「この映画は事実と異なる」という政府作成のPR動画を流すよう命じるなど異例の攻撃を仕掛けた。しかし、ほとんどの独立系映画館がその命令を拒否。ヨーロッパ映画監督連盟(FERA)をはじめ多数の映画人がホランド監督の支持を表明し、政府vs映画という表現を巡る闘いが世界的な注目を集めた。政府からの猛批判は監督が訴訟を示唆するまでに発展し、宣伝会社のSNSに誹謗中傷が寄せられるなど監督自身が身の危険を覚えるほど論争が激化する中、ポーランド国内では公開されるや2週連続トップの観客動員を記録。ポーランド映画として当時年間最高となるオープニング成績をたたき出し、異例の大ヒットとなった。
記録を禁じられた国境で、いま何が起こっているのか―
ポーランド政府は2021年9月、EU諸国への亡命を求める人々で溢れるベラルーシとの国境付近に非常事態宣言を発令(2021/9/3ロイター通信)。ベラルーシから移送される難民を受け入れ拒否したうえ強制的に送り返し、ジャーナリスト、医師、人道支援団体らの立ち入りをも禁止した。
入国を拒絶された難民たちは国境で立ち往生し、極寒の森をさまよい、死の恐怖にさらされた…。
ストーリー
 
「ベラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じて祖国を脱出した、幼い子どもを連れたシリア人家族。しかし、亡命を求め国境の森までたどり着いた彼らを待ち受けていたのは、武装した国境警備隊だった…。
解説
 
ポーランドとベラルーシの国境
ポーランド共和国と東の隣国ベラルーシ共和国の現在の境界は、野原・森などの中に人為的に引かれたまっすぐな線(人為国境)と川の流れに沿って蛇行する線(自然国境)から成る。映画『人間の境界』の舞台は、ポーランド・ベラルーシ間の森林に隠れた国境線とそのポーランド側周辺地帯である(第1章冒頭とエピローグを除く)。
ポーランドとベラルーシの国境には、道路では7地点、鉄道では5地点、河川では1地点の通関地点があるものの、2021年の移民危機以後、自動車での国境越えは大幅に制限されている(物流・旅客各1地点)。いずれにせよ、『人間の境界』に描かれているのは、そうした正規の通関手続きを経ての国境越えではなく、ベラルーシ国境警備隊が意図的に開けた抜け道を通っての非合法な越境とポーランド国境警備隊による押し戻し(プッシュパック) である。
映画は俯瞰で緑の森林を写したカラー映像で始まり、原題のGreen Border(緑の国境〔地帯〕)が白色のフォントで現れる。すぐに色彩が反転して、森林 はモノクロに、タイトルは緑色に変わる。表題は、森林 の中に人為的に引かれた直線の国境を指している。ポーランドの宣伝・批評などでは、Zielona Granicaという直訳タイトルが使われたが、ポーランド語の辞書には「緑の国境を越える」が半世紀以上前から熟語として登録されており、「政府の許可なく非合法に越境する」ことと説明されている。シェンゲン協定発効(1995)以後は、同圏内の国境検査の必要がない国境を指すこともある。
『人間の境界』の難民たちは、(国境検査が不要な)「緑の国境」がある世界(シェンゲン圏≒EU)を目指して、ベラルーシ政府が意図的に設けたポーランドとの(国境検査を無化した)「緑の国境」を越える……。
※ポーランド語・文化の専門家である久山宏一氏による寄稿の一部を掲載しております。全文はパンフレットに収録いたします。
DIRECTOR
 
監督
アグニエシュカ・ホランド
1948年、ポーランドのワルシャワ生まれ。1972年にプラハ芸術アカデミーを卒業。クシシュトフ・ザヌッシの助監督を務め、アンジェイ・ワイダに師事した。これまで1985年に『Angry Harvest(英題)』、1990年に『ヨーロッパ、ヨーロッパ~僕を愛したふたつの国~』、2012年に『ソハの地下水道』でアカデミー賞に3度ノミネートされている。主な監督作品に『熱病』(1980)、『オリヴィエ、オリヴィエ』(1992)、『秘密の花園』(1993)、『太陽と月に背いて』(1995)、『Julie Walking Home(原題)』(2002)、『ポコット 動物たちの復讐』(2017)、『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(2019)、『Charlatan(英題)』(2020)など。また、『Treme(原題)』(2010-13)や『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(2013-18)といった人気TVドラマシリーズの監督も務めている。2020年、ヨーロッパ映画アカデミー会長に就任。
CAST
 
マヤ・オスタシェフスカ
ユリア役
1972年、ポーランド生まれ。クラクフの国立演劇学校を卒業し、スティーブン・スピルバーグ監督作『シンドラーのリスト』で映画デビュー。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたアンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』(2007)に主演し、マウゴジャタ・シュモフスカ監督がベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞した『君はひとりじゃない』(2015)に出演。動物保護の活動もしており、2002年に世界動物保護協会から賞を受けた。
ベヒ・ジャナティ・アタイ
レイラ役
イラン生まれ。2001年に『The Old Man Who Read Love Stories(原題)』の出演で注目を集め、25本以上の映画や舞台に出演。主な出演作に2009年のカンヌ国際映画祭で批評家週間に選出された『Altiplano(原題)』、2016年アカデミー賞国際長編映画賞のイギリス代表に選ばれた『アンダー・ザ・シャドウ 影の魔物』、2018年のカンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品された『バハールの涙』、2018年のアカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされた『ブレッドウィナー』(声の出演)など。
モハマド・アル・ラシ
祖父役
1970年、シリア生まれ。スラヴォーミル・ムロージェクの戯曲の上演『亡命者たち』(2011)や『The 4th O’clock In Paradise Time』(2013)、『Handarbeit-Cover up』(2018)、ラジ・リ監督作でカンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞した『レ・ミゼラブル』(2019)の続編となる『Les Indésirables』(2023)に出演。約20本のテレビ映画と50本のテレビシリーズに出演している。「ダマスカス演劇研究所」という会の創立メンバーであり、ダマスカスの国立劇場で舞台俳優としても活躍している。
ダリア・ナウス
アミーナ役
俳優、ダンサー、振付師として活躍するフランス系レバノン人。レバノンの短編映画やウェブシリーズに「The little drop」(2014-19)に出演。『Exifiltés』(2019)、カトリーヌ・コルシニ監督作『分裂』(2011)に出演。ジュリー・デルピー監督作『Les barbares』が公開予定。
トマシュ・ヴウォソク
ヤン役
1990年、ポーランド生まれ。『私、オルガ・へプナロヴァ―』(2016)、アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』(2016)、『聖なる犯罪者』(2019)など話題作に出演。2020年には『ギャングスタ―・ロード』でポーランド映画祭最優秀助演男優賞を受賞。