エリザベート 1878
- 発売中
- 2024年3月6日DVD&Blu-ray
- 2023年8月25日
原題:Corsage
2022年/オーストリア、ルクセンブルク、ドイツ、フランス/ドイツ語、フランス語、英語、ハンガリー語/114分/カラー・モノクロ/2.39:1/5.1ch
©2022 FILM AG – SAMSA FILM – KOMPLIZEN FILM – KAZAK PRODUCTIONS – ORF FILM/FERNSEH-ABKOMMEN – ZDF/ARTE – ARTE FRANCE CINEMA
ハプスブルク家最後の伝説的皇妃エリザベート
自由を渇望した彼女の知られざる心の軌跡
ハプスブルク帝国が最後の輝きを放っていた19世紀末、「シシィ」の愛称で親しまれ、ヨーロッパ宮廷一の美貌と謳われたオーストリア皇妃エリザベート。1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えた彼女は、コルセットをきつく締め、世間のイメージを維持するために奮闘するも、厳格で形式的な公務にますます窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日々のような刺激を求めて、イングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねる中、誇張された自身のイメージに反抗し、プライドを取り戻すために思いついたある計画とは——。
日本でも宝塚歌劇団、東宝ミュージカルの大人気演目の主人公として広く親しまれているエリザベートの40歳になった1年間に光を当てた本作は、史実に捉われない大胆かつ斬新な美術と音楽、自由奔放な演出で、そんな伝説的皇妃のイメージを大きく覆し、「若さ」「美しさ」という基準によってのみ存在価値を測られてきた彼女の素顔を浮き彫りにする 意欲作である。
監督・脚本はオーストリア映画界を代表する気鋭、マリー・クロイツァー。エリザベートに扮するヴィッキー・クリープスは、『ファントム・スレッド』や『彼女のいない部屋』など、欧米を股にかけて活躍する実力派。クリープスが本作のアイディアの発端になったというだけに、その圧巻のパフォーマンスで、2022年、第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀演技賞に輝いた。さらに、本作はロンドン映画祭でも最優秀作品賞を受賞、第95回アカデミー賞国際長編映画賞ショートリスト(オーストリア代表)にも選出され、クリステン・スチュワートやエドガー・ライト監督(『ベイビー・ドライバー』)、パティ・スミスほか、各界著名人からも賞賛の声が寄せられている。
老いに向き合い、皇妃を縛り付ける「コルセット(仏語:Corsage)」や皇室の厳格な伝統、そして世間の理想像から自由になることを心に決めた時、彼女は何を選び取るのか。あまり語られることのなかった後年のエリザベートを描く本作を通して、なぜエリザベートが現代に生きる私たちの心をとらえて離さないのか、その理由が見えてくる 。





















COMMENT
今まで「謎めいた」と形容されて来たオーストリー皇后エリザベート。
その人生の真実を、1878年1年間の彼女の生活を追うセミ・ドキュメンタリー的なタッチで描く異色作。
女性監督ならではの視点が、彼女の生き方に新たな光を当てている。
小池修一郎(宝塚歌劇団演出家)
今までのエリザベート皇后の伝記を塗り替えてしまうような革命的な映画。
真実と嘘の境目は誰にもわからない。
でもこの映画を観た後はエリザベートが自由になれて良かったと心から思う、そこに真実があるのだとも。
一路真輝(女優)
エリザベートは、なぜか僕たちの心をとらえて離さない。
でも、その真実は決して誰にも明かされない。
常に虚ろな眼差しの彼女が、遂に解き放たれる新たなエンディングに、その真実の欠片を見た気がした。
井上芳雄(俳優)
真っ白な鳥のように、どこまでいっても自由。
誰もが感じる葛藤をあっさり捨て去るシシィの姿に心がスっと軽やかになりました。
固定概念なんて捨ててしまえ!
私の身も心も私だけの物だ!
彼女の信念を感じる作品です。
米津れいみ(俳優/元宝塚歌劇団)
コルセットで縛られた人生。
ゆっくり流れる時の中で燃え上がりたい希望を閉ざす自分自身。
コシノジュンコ(デザイナー)
こうあらねばならない、そんな世界に中指を立てるエリザベート。
浴槽に沈む孤独な魂は、窒息し、もがき、やがて史実さえも逸脱し大海原へと飛ぶ。
静かな反逆が地続きの今へと響く。
津田健次郎(声優)
細い針が心の中にゆっくり刺さっていくように淡々と流れる時間。
私の知っている“エリザベート”の世界ではなく、とても朧げで虚ろ、そして孤独だ。
私達自身が縛られている美貌や年齢といった女性の価値観に対して、静かに問い掛けを与えてくれる作品。
中田クルミ(俳優)
若さと美しさばかりに目を向けられる女の人生の苦しさよ。
自我と孤独と矜恃を持ち合わせ、
立場をわきまえず自由を愛し、
人間として生きることを諦めなかったこの王妃、完全にロックスター。
お人形さんなんかでいられるものか。
宇垣美里(フリーアナウンサー・女優)
砂糖菓子のように淡くて甘い映像世界で寝タバコをして、中指たてて、舌を出したりするエリザベートは『女の惚れる女』そのもの。
シトウレイ(ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト)
ただただ自由に生きたいだけの女が、時代、文化、置かれた境遇によって後ろ指を指される女になってしまう。
現代に生きるわたしたちも、この映画のエリザベートのように、見えないコルセットで締め上げてくる世界に対して中指を突き立てろ。
児玉美月(映画文筆家)
「象徴」としての美しさの呪縛から逃れるための奔放な行為。
コルセットの拘束が「飛翔(逃走)」の合間に挿入される。
「混沌とした博物館」のようなエリザベートの1年間のリアリテイを鮮烈なヴィジュアルで描いた傑作。
精神病院の女性患者たちの間に紫の炎のように立つ場面は内的な狂気を周りと静かにシンクロさせ、圧巻。
長谷川祐子(キュレーター)
若さと美貌を期待され続けて40歳を迎えたオーストリア皇妃の苦悩と逃亡。
あまりに恵まれ過ぎて共感しづらいこの伝説的な女性をまったく伝記的ではない形で取り上げることで、マリー・クロイツァー監督は、フェミニスト的な共感を生み出そうとしているのではなく、各国の王族や皇族といった特権階級の女性たちに対して現代社会がいまだに抱き続けるロマンチックな幻想を苛立ちと共に破壊しようとしているように見える。
鼻につく高慢さと偽りない苦悩とを併せ持つ、好感を抱かせない、しかし強靭な個性を持つ中年女性としてエリザベートを描き切ったヴィッキー・クリープスの演技が素晴らしい。
清水晶子(フェミニスト/クィア理論研究者)