プーチンの愛国教室
- 近日公開
- 2026年10月3日公開
原題:Mr. Nobody Against Putin
2025年/デンマーク、チェコ/ロシア語/5.1ch/90分/G
©2025 made in copenhagen Aps, Pink Productions s.r.o.
子どもたちが愛国プロパガンダに飲み込まれていく。
僕は、その片棒を担ぐのか?――ひとりの教師が記録した、今そこにある現実。
ロシア・ウラル山脈の麓の小さな田舎町にあるカラバシュ初等・中等学校。母校でもあるここでイベント企画・撮影担当の教員として勤めるパヴェル・タランキンは、子どもたちから“頼れるお兄さん”として慕われる人気者だ。
彼らの何気ない日常や成長の瞬間をビデオカメラに収めながら、オフィスを開放して一緒にアートやおしゃべりを楽しむ、忙しくも穏やかな日々。自由と民主主義、そして自身の職業を心から愛する彼は言う。「この仕事の魅力は、生徒を支えられること」
しかし、2022 年 2 月のウクライナ侵攻開始を機に、彼らの日常は一変する。
プーチン大統領は子どもたちを<未来の兵士>として育てるため、戦争を賛美し参加するよう学校で教え込む「愛国教育」の導入を新たな国家方針として発令。和やかだった学校の雰囲気は、瞬く間に緊迫した「戦時中」のものへと塗り替えられていく――。
タランキンは変容していく学校と人々の姿を約2年間かけてつぶさにカメラに収め、デンマークを拠点に活動するアメリカ人ドキュメンタリー作家デヴィッド・ボレンスタインと共同で、極秘裏に本作を制作。
当事者視点でプロパガンダ教育を捉えた異例の映像は、世界中で大きな注目と絶賛を集め、アカデミー賞®をはじめ多数の映画賞を受賞した。
しかし、その影響力をみたロシア当局は国内での上映禁止を決定。タランキンは国家反逆者として事実上の国外追放を言い渡されるという、徹底的な弾圧にさらされている。
国家はどのようにして反対意見を封じ、戦争へと突き進むのか――いま世界に蔓延する現在進行形の現実を突きつける、必見のドキュメンタリーだ。























COMMENT
監督が向き合う子どもたちのまなざしに答えがある。
教師が息苦しさを感じる日本でこそ必見です。
斉加尚代(映画『教育と愛国』監督)
学校で銃を構える仕草をする少年のあどけなさに涙。
まるで他人事とは思えない・・・我が国とも重なりそうで、胸が締め付けられた。
東ちづる(俳優・一般社団法人Get in touch代表)
カメラを構えるは学校行事の企画担当教員パヴェル。
故郷の町の愛着ある生活、仕事の充実感、生徒たちの未来、それらすべてが愛国プロパガンダと戦争支援で塗り変えられる、崩れていく様が映し出される。
素朴で愛嬌あるパヴェルの語り口が「他人事ではない」と教えてくれる。
武田一義(漫画家『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』)
大人たちよ、わきまえるな。空気に流されるな。
沈黙と無力感と服従が子どもたちを戦地に送り出すさまを目に焼き付けろ。
キニマンス塚本ニキ(翻訳者・コラムニスト)
朴訥なれど強烈な勇気に震えた。
教育現場に忍び寄る軍靴の音…。
戦争をなくすために、私にもできることがあると思えた。
平尾剛(スポーツ研究者/成城大学教授)
「“愛国"を推すのは“問題がある"と言っているのと同じだ」
この映画を撮ったパヴェルは一人カメラの前で呟いた。
愛国教育が始まり和やかだった学校は、手榴弾投げコンテストが催され、傭兵が教壇に立ち、人々は疑心に駆られ、クラスメイトは徴兵され、そして死んだ。
「国を愛することは、国旗を掲げることでも国歌を歌うことでもない」
パヴェルの言葉に、“愛国"を強いようとする今の日本の政治の行末に胸がきりりと痛む。
愛国を謳い戦争に突き進んだ過去をもつ私たちが観なければならない傑作。
eri(デザイナー・アクティビスト)
観ながら震撼する。国旗を掲揚して愛国心の高揚。
「外国の代理人」とは「外国のスパイ」のこと。
これはロシアの話ではない。今の日本の話でもある。
観終えて吐息。子供は白い布だ。どんな色にも染まる。
メディアと教育に煽られればイチコロだ。
森達也(映画監督)
戦争が始まったら、権力者は必ず子どもたちを戦争に動員しようとする。
そのとき「愛国心」を大義名分にすれば、一瞬で実現してしまう。
そのメカニズムを命懸けで描いた、貴重で、恐るべき作品である。
想田和弘(映画作家)
ちょっとオフビートな教員が記録する、洗脳教育のリアル――
表情がこわばり、魂が抜き取られていく子どもたち。
怖っ、ホラーかよ。いやいや、これ、この国の鏡だから。
脳内の非常警報が鳴りやまない。
坂上香(ドキュメンタリー映画監督)
「国がこうなってからでは遅い」と、この前代未聞のドキュメンタリーは世界に訴えかけている。
生徒思いの教師の勇気が生んだ、奇跡のような傑作。
大島新(ドキュメンタリー監督)
“頼れる兄貴”だった先生のカメラに向かう無邪気な瞳たち。
変わらず穏やかにも見える校舎の中で、カメラが向かう瞳からは色が失せていく。
その穏やかな狂気の道程こそが怖すぎる現実だが、対岸の火事と思えなくなった現実はもっと怖い。
五百旗頭幸男(ドキュメンタリー監督)
母と同様に国を無条件で愛することを強制?
そんなプーチン政権の恐ろしさを小学校の現場で淡々と撮影した強烈な記録です。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
ふだん見る機会のない、ロシアの学校生活の裏側。
悩めるティーンエイジャーが、仲間だけに見せる表情は心を打つ。
だが、いまわたしたちが彼らの姿を見ているのは、いったいどういうわけか。
戦争とは、人間とは。本作には複数の倫理的な問いかけがある。
上田洋子(ゲンロン代表/ロシア文学者)
「いま消耗戦で命を奪われているロシア兵の多くは、まだリベラルな教育が生きていたころに育った」
という構造的悲劇も浮き彫りにする、実に奥深い傑作。
そしてこれは、おそらくロシアだけの問題ではない。
マライ・メントライン(作家・エッセイスト)
これは本当なのか?あまりにもあからさまでむき出し。
そこのけそこのけ愛国が通る。
ダースレイダー(ラッパー)
これは隠し撮りされた映像ではない。
誰もが何の躊躇もなく、いつもどおりカメラの前に立っている。
その“日常”に何より恐怖した。
月永理絵(ライター、編集者)
「国を愛するということは国旗を掲げることじゃない」
未来を育むはずの教育が、愛国を利用したプロパガンダに塗り替えられていく。
忍び寄る危険に気づいた頃には、もう後戻りできない。
これは戦前の日本にあった、そして軍事化された明日の日本にあるかもしれない光景だ。
ISO(ライター)