対峙
- 発売中
- 2023年9月8日DVD&Blu-ray
- 2023年2月10日公開
原題:MASS
2021年/アメリカ/英語/111分/ビスタ/カラー/5.1ch/G
©2020 7 ECCLES STREET LLC
共に息⼦を失った被害者と加害者の両親。
胸をえぐり、魂を震わせる、その対話がもたらすスリルと衝撃――
アメリカの⾼校で、⽣徒による銃乱射事件が勃発。多くの同級⽣が殺され、犯⼈の少年も校内で⾃ら命を絶った。それから6年、いまだ息⼦の死を受け⼊れられないジェイとゲイルの夫妻は、加害者の両親であるリチャードとリンダに会って話をするという驚くべき⾏動に出る。場所は教会の奥の⼩さな個室、⽴会⼈は無し。「お元気ですか︖」と、古い知り合い同⼠のような挨拶をぎこちなく交わす4⼈。そして遂に、ゲイルの「息⼦さんについて何もかも話してください」という⾔葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける――。
ほぼ全編、密室4⼈の会話だけで進⾏するにも関わらず、どんなスリラーにも勝る緊迫感に満ちた展開によって、本作は英国アカデミー賞をはじめ各国の映画賞81部⾨でノミネート、釜⼭国際映画祭フラッシュフォワード部⾨観客賞をはじめ43映画賞を受賞。映画批評サイトRotten Tomatoesでは、批評家95%・観客90%を叩き出し、⼤絶賛された注⽬の衝撃作︕ 不寛容やリアルな⼈間関係の希薄さが問題視される現代社会で、〈被害者と加害者の対話〉という極めて重くセンシティブなテーマを圧倒的な臨場感とスリルで描き切る、いま観るべき新たな傑作がついに⽇本で公開される︕
1秒先に地雷が埋められているかのようなスリルと洞察力にとんだ脚本を書き上げ、初監督も務めたのは、『キャビン』やTVシリーズ「ドールハウス」などに出演、俳優として活躍しているフラン・クランツ。幼い娘を持つ彼は、2018年にパークランドの⾼校で起きた銃乱射事件のニュースで泣きながらインタビューに答える⽗兄の⾔葉に激しく動揺し、学校内銃撃事件について深く掘り下げるようになる。そして、様々な報告書を読むうちに、銃撃犯の両親と犠牲者の両親との会談に関する記述に出会う。4⼈の会話だけで、それぞれの息⼦の成⻑から過ごしてきた⻘春の日々、家族との関係、さらには銃乱射事件の現場の状況までが、まるですぐ側で⽬撃しているかのような奥行きのある脚本。そのリアルな臨場感は緻密で⼊念なリサーチの賜物だ。
息子との関係を心から悔やみながらも、彼も苦しんでいたと訴えるリチャードを演じるのは、TVシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のリード・バーニー。罪を犯した息子への愛は消えないことに悩み抜き、隠し続けたある出来事を告白するリンダに、『ヘレディタリー/継承』のアン・ダウド。何層にも重なった母親の心理に分け入る本作の演技で、英国アカデミー賞にノミネートされた。
事件を論理的に解明しようと最も冷静かつ客観的に振る舞っていたが、思わぬ感情があふれ出すジェイには、世界的大ヒットシリーズ『ハリー・ポッター』のジェイソン・アイザックス。息子の短かった人生に何とか意味を見出そうとするあまり過去から逃げられなくなるゲイルに、『グーニーズ』のマーサ・プリンプトン。演技を極めたベテラン俳優たちが、互いの役への想いから自らのプライベートな体験までをリハーサル中に深く語り合い、一触即発の台詞の応酬に命を吹き込んだ。数々の映画賞でアンサンブル賞を獲得した演技は、人間の複雑さと脆さを余すところなく表現し、観る者の胸を打つ。
果たして、最後に4⼈と共に流れ着く、観る者すべてが初めて体感する境地とは──















COMMENT
映画を見て数日経つが、紡ぐ言葉が見つからない。
とにかく凄まじいものを見た。
映画が何のために存在するのか、その一端を教えてくれた気がします。
多くの悲しみと憎悪の溢れる世の中に、静かな光を差し込む映画です。
白石和彌(映画監督)
自身が生きてきた経験や準備された言葉では言い表すことができず自問自答を繰り返している。
大切な人の手を握りしめることしかできない。
奥田瑛二(俳優/映画監督)
シンプルは力強い。
対話のみで加害者と被害者の心の葛藤を描き切った。
人生の残酷と生きることの美しさ。
何度となく出てくる「赦し」という言葉の重さ。本物の映画だ。
瀬々敬久(映画監督)
埋めようのない喪失を味わった2組の夫婦が、問いかける。
その先を、私たちはどう生き続けることができるのか?
坂上香(ドキュメンタリー映画監督)
教会の密室、6年の経過を経て許すか許さないかのサスペンス。
彼らが望む「完結」は得られるのか、最後まで目が離せない。
デーブ・スペクター(放送プロデューサー)
罪と罰と、許し。
突きつけられる問いに向きあい続けた親たち。
事件の後も生きなければならない彼らの心に触れてほしい。
岸善幸(映画監督/ディレクター)
人間の心はとてももろい。でも、とても深い。
そして、何度でも再生する。
心の専門家であるはずの私も魂を揺さぶられた。
香山リカ(精神科医)
他者への想像力。
少し広がるだけでも世界は暖かい。
しかし簡単に出来ないのが人間。
もどかしさが痛く切ない。
吉田恵輔(映画監督)
どんなに憎んでいても、赦せなくても、向き合わなければ知ることすらできない。
対峙することの苦しさと、それでもその先にしか一筋の光がないことを知らしめてくれる作品。
浜田敬子(ジャーナリスト)
映像は一見、何の問題もない暮らしから始まる。
だが4人の親によって子供たちの様子が炙り出される。
社会や個人、加害者や被害者の気持ち、残された者、親や子とは?
誰もが持ちうる混乱、疑惑、不安、恐れを炙り出す。
実にシンプルだ、シンプルゆえに語られてこなかったことを語る彼らの言葉が心に響く。
不安が人を自己的にさせ、分断を生みだす今、対峙し話し合うことは可能か否か?
これは演劇であり映画であり新たなドキュメンタリー、この時代が産んだ秀作だ。
宮本亞門(演出家)
耳を傾ける者がいて初めて、胸のうちに押し込められた思いは言葉となって姿をあらわす。
上西充子(法政大学教授)
まさしく密室劇。
対峙するのは加害者の家族と被害者の遺族。
言葉をぶつけ、憎悪や絶望に身を焦がし、そして慰め合う。
言葉にすればひりひり。罪と罰とは何か。
ここに今の世界の多くの問題が凝縮されている。
森達也(映画監督/作家)
現代のアメリカで多発する学校での乱射事件を限りなく近い距離から人間的に見つめる感動の傑作。
4人の役者の演技に大絶賛を送りたい。
猿渡由紀(L.A.在住映画ジャーナリスト)
赦しだけが魂の救いだとしても、どうして凍てつく心の扉を、開けることなどできるだろうか。
その絶望的な問いに真正面から挑んだ映画がここに出現した。
この作品を通じて、あらゆる意味での人間の勇気を、我々は知ることになるだろう。
名越康文(精神科医)
原題はMass。
教会のミサとMass Shooting(無差別乱射)の両方を指す。
銃規制について論争する映画ではなく、愛する者を失くした人々を癒やそうとする映画。
だから、誰の胸にも迫る。
町山智浩(映画評論家)