異端の鳥
- 発売中
- DVD&Blu-ray
- 2020年10月9日
原題:The Painted Bird
2018年/チェコ・スロヴァキア・ウクライナ合作/スラヴィック・エスペラント語、ドイツ語ほか/169分/シネスコ/DCP/モノクロ/5.1ch/R-15+
ヴェネツィア映画祭で途中退場続出!だがラストまで観た人は10分のスタンディングオベーション!
圧倒的映像美で語られる、モノクローム3時間、驚異の映画体験。
昨年のヴェネツィア国際映画祭において、『ジョーカー』以上に話題を集めた作品が『異端の鳥』だ。第二次大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるために、たった一人で田舎に疎開した少年が差別と迫害に抗い、想像を絶する大自然と格闘しながら強く生き抜く姿と、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”を赤裸々に描いた本作は、ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映されると、少年の置かれた過酷な状況が賛否を呼び、途中退場者が続出。しかし、同時に10分間のスタンディングオベーションを受け、ユニセフ賞を受賞し、同映画祭屈指の話題作となった。本作はその後も多くの批評家から絶賛を浴び、アカデミー賞®国際長編映画賞のチェコ代表にも選ばれ、昨年開催された第32回東京国際映画祭においても「ワールド・フォーカス」部門で上映され、高い評価を得た。
原作は自身もホロコーストの生き残りである、ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した彼の代表作「ペインティッド・バード(初版邦題:異端の鳥)」。ポーランドでは発禁書となり、作家自身も後に謎の自殺を遂げた“いわくつきの傑作”を映画化するために、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督は3年をかけて17のバージョンのシナリオを用意。資金調達に4年をかけ、さらに主演のペトル・コトラールが自然に成長していく様を描く為、撮影に2年を費やし、実に11年もの歳月をかけて映像化した。撮影監督を務めたウラジミール・スムットニーは、『コーリャ 愛のプラハ』でアカデミー賞®外国語映画賞を受賞し、チェコのアカデミー賞であるチェコ映画賞最優秀映画賞を7度も受賞しているチェコ映画界の巨匠である。舞台となる国や場所を特定されないように使用される言語は、人工言語「スラヴィック・エスペラント語」を採用。シネスコ、モノクロームの圧倒的な映像美で描かれる約3時間の物語は、映画的な驚異と奇跡に満ち満ちている。
迫害を生き抜くうちに徐々に心を失っていく少年を体当たりで演じ切ったのは、新人のペトル・コトラール。他にもステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、ウド・キアーなどのいぶし銀の名優たちが顔を揃えている。
人はなぜ異質な存在を排除しようとするのか? ホロコーストの源流を辿り戦争と人間の本性に迫る、美しくも残酷な衝撃作は、観る者の心を激しく揺さぶり問いかけてくる。





























COMMENT
見終わって私の言葉はしばし仮死状態に陥りました。
でもこの映画にひそむ沈黙から言葉はふたたびよみがえるでしょう。
谷川俊太郎|詩人
邪悪を射抜く少年のまなざしに、魂を奪われ、ただ立ち尽くすしかない。
小川洋子|小説家
生き物の本質に善悪の基準なんてないだろう。
生き残るために「人間性」は空虚な言葉になって、非情で残虐な世界に埋没していく。
それでも、人が生き続ける限り、忘却の彼方から言葉が生き返る瞬間を、僕らは最後に目撃するだろう。
奈良美智|画家・彫刻家
映画館のスクリーンで観るべき映画。その映像美の中に目を背けてはいけない「人間の正体」がある。
古舘 寛治|俳優
戦争が人間を変えるのではなく、元々人間が残忍だから戦争も虐殺も起きるのだ。筆舌に尽くしがたい醜悪さを突きつける、東欧の芸術作品らしい陰惨で濃厚な魔術的物語。
深緑野分|作家
美しく完璧なショットが炙り出すのは、人の皮を被った動物の姿。
この映画でしか味わえない圧倒的な余韻がある。
李相日|映画監督
生き延びることそれ自体が理不尽であるような最悪な状況。
不条理と狂気にまみれた少年の日々を直視させる映像美が憎い。
濱野ちひろ|ノンフィクションライター
戦争が引き起こす人間性の破綻、その連続から目を背けたくなりつつも、美しい白黒の映像美と主人公の少年による無言のリアルな演技で最後まで釘付けになりました。
ピーター・バラカン|ブロードキャスター
これまで最も不快な戦争体験は「炎628」だったが、本作はそれに匹敵する。時代に流されていく孤独な少年の流刑。いつかは幸せになれると、微かな期待をしつつの169分は、見事に裏切られる。少年の無垢を彩る美しいモノクロ映像と、戦火の吐瀉物や血痰とのコントラストが続く。ところが、不思議なことに後半には戦争色に全てが染まる。戦時下、どこにも光はなく、色もない。灰色に染めあげられていく無垢なる“モノクロームの少年”。もう子供でも大人でも戦士でもない。彼こそが“戦争”そのものなのだ。
小島秀夫|ゲームクリエイター
凄まじい映像と物語。
普通の人たちの内なる差別、悪意、残虐、あらゆる「業」が、少年にここまでの仕打ちをするのか。長尺を忘れて、心の中で叫び続けた。この機会を逃さずに。
松尾貴史|タレント
川本三郎先生の書評で原作小説を知り、読みました。恐ろしい物語ですが、〝知っている地獄〟のような不思議な懐かしさを感じました。映画と小説の両輪で理解を深めてほしい作品です。
桜庭一樹|作家