人間の境界
- 発売中
- 2024年12月6日DVD
- 2024年5月3日公開
原題:Zielona Granica
英題:Green Border
2023年/ポーランド、フランス、チェコ、ベルギー/ポーランド語、アラビア語、英語、フランス語/152分/G/ビスタ/カラー・モノクロ/5.1ch
©2023 Metro Lato Sp. z o.o., Blick Productions SAS, Marlene Film Production s.r.o., Beluga Tree SA, Canal+ Polska S.A., dFlights Sp. z o.o., Česká televize, Mazovia Institute of Culture
その場所で、人間は兵器になる――
政府が隠したがった<国境の真実>を映像化!
ポーランドの巨匠が命を懸けて放つ、鬼気迫る告発
本作は、ベラルーシ政府がEUに混乱を引き起こす狙いで大勢の難民をポーランド国境へと移送する<人間兵器>とよばれる策略に翻弄された人々の過酷な運命を、シリア人難民家族、支援活動家、国境警備隊の青年など複数の視点から描き出す群像劇だ。
安全な生活を送れると信じてポーランドへ渡ってきたシリア人家族。しかし、ようやく辿り着いた直後、武装した警備隊から非人道的な扱いを受けた上にベラルーシへ送り返され、そのベラルーシからも再びポーランドへ強制移送されるという、どちらの国からも難民を押し付け合うような暴力と迫害に満ちた過酷な状況を強いられ、終わりのない無限地獄のような日々を過ごすことになる…。
監督は、3度のオスカーノミネート歴を持ち『ソハの地下水道』『太陽と月に背いて』など数々の名作を世に送り出してきたポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド。
友人のカメラマングループと国境の写真を撮影するなど難民をめぐる問題を追っていた彼女は、この事態を受け情報が遮断された2021年に「国境に行くことができなくても、私は映画を作ることができる。政府が隠そうとしたものを、映画で明かそう」と本作の制作を決意したと語る。
政府や右派勢力からの攻撃を避けるためスケジュールや撮影場所は極秘裏のうちに、24日間という驚異の猛スピードで撮影を敢行。隠蔽されかけた国境の真実を、大量のインタビューや資料に基づき、心を揺さぶる人間ドラマとして映像化を果たした執念の一作だ。
実際に難民だった過去や支援活動家の経験を持つ俳優をキャスティングしたことで、ドキュメンタリーと見紛うほどの圧倒的なリアリズムが産み出されている。
2023年ヴェネチア映画祭コンペティション部門でお披露目されると、その複雑かつスリリングで息をもつかせない展開が、モノクロームの圧巻の映像美とともに絶賛を集め、審査員特別賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭の観客賞をはじめ、これまでに17の賞を受賞、20のノミネートを果たし(2024年2月27日現在)世界各国の映画祭で高い評価を獲得している。




















COMMENT
難民という人間存在の究極の不条理。
これが描けなければ映画芸術に意味はない、と考える監督の不退転の勇気が突き刺さる。
沼野充義(東京大学名誉教授・ロシア東欧文学者)
故郷を追われ、生きるために亡命するしかない難民たち。
“国境越え”をはかる者、国境を守る者、難民たちを支援する者。
本作は、この3つの視点から描かれる。
移民にもなれず、ボーダーに潜伏、消耗しては命を落としていく漂流者たち。
空爆や虐殺ではない、戦争が産むもうひとつの地獄絵図。
それをアンジェ・ワイダを思わせるドキュメンタリーとフィクションの境界を越える手法で、ギリギリの“人間の境界線”を炙り出す。
同時に、ウクライナやパレスチナの様に、国を追われた結果、新たな境界線が紛争の次なる火種ともなる事をも示唆する。
難民問題は、もはやヨーロッパだけの出来事ではない。
"緑の国境(Green Border:原題)"は、何処に引かれてもおかしくはない。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
「私たちは二つの国の間で、ボールのように蹴りあわれた」
ベラルーシ・ポーランド国境をさまよった難民から、私が聞いた言葉が、そのままこの映画で再現されていた。
安田菜津紀(メディアNPO Dialogue for People 副代表/フォトジャーナリスト)
これほど言葉にならない叫びと涙を堪えながら映画を観たことがなかった…
あなたは壊れた世界のルールに従う側の人間ですか?それとも抗える人間ですか?
キニマンス塚本ニキ(翻訳者・ラジオパーソナリティ)
まさしく今、ガザでの虐殺を生き延びるために大金を払いエジプトに逃れようとする、極限状態にあるパレスチナの人たちとメッセージを交わし、彼らのための寄付を募る毎日を過ごしながら、この映画を観て感想を綴るのは苦しい。
正直、目を逸らしたい、と思いながら見つめた。
これは“昔、遠い国で起きた出来事”ではない。
この子どもが生き延びるために、今、自分は何をするのか。
こんな世界をいつまで許すのか。今、誰もがやるべきことがある。
坂本美雨(ミュージシャン)
国家に翻弄される難民たち=私たちと同じ生身の人間。
ポーランド政府が隠したかった非道は日本でも小さなレベルだが起きている。
そこにある現実は人間破壊だ。
私たちの感性を鋭く問う問題作。
スクリーンのこちら側には不条理な世界が広がっている。
有田芳生(ジャーナリスト)
生きようとして死んだ少年がいた。
私のせいだと母親は叫んだ。
だが、責任は、本当はどこにあるのか。
この問いが何度も突き刺さってきた。
望月優大(ライター)
国民国家とそれを隔てる国境という虚構を巡って多くの悲劇が生まれ、人が死ぬ。
それでもビートボックスとラップの輪とそれを飛び越える渡り鳥の向かう先に僅かな希望はある。
ダースレイダー(ラッパー)
「私の罪はパスポート」と言わせてしまう非道な現実はベラルーシとポーランド国境だけの話ではない。
私たちは傍観者でいいのか。
圧倒的な映像が日本で何をすべきか問いかけてくる。
浜田敬子(ジャーナリスト)
ホロドモールを描いた名作『赤い闇』に続く新作。
シリア人家族やアフガン女性の難民、国境警備隊員、難民支援活動家等々の其々の視点で、国境の森林地帯の凄惨な人間模様に光を当てる。
国境を挟んで、どちらの国からも拒絶される難民達の苦痛に歪む顔、恐怖の只中の赤ん坊の泣き声を、世界中が目に焼き付けるべきだ。
中川敬(ミュージシャン/ソウル・フラワー・ユニオン)
ホランド監督は、難民を排斥しようとする右派はもちろん、
人道主義を掲げながら実際には何もしようとしないEUや左派の偽善をも批判する。
私たち一人ひとりに「行動」を要求している。
想田和弘(映画作家)
テニスのラリーが頭に浮かぶ。
ネットを挟んだ長い攻防に興奮を覚えてきた脳が、混乱に陥る。
国境を挟んだ不条理のコートで、絶望にのみ込まれそうな希望にすがる人間を、人間が打ち返すラリーが続いている。
叫びたくなった。
五百旗頭幸男(ドキュメンタリー監督)
私はここにいたくない。
私はここに残る。私はどうすればいい。
それぞれの叫びが「今、この世界はどこに向かおうとしているのか?」と強烈に問う。
武田砂鉄(ライター)
ポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド監督が、祖国を敵に回してまでも、世界に伝えたかった難民問題がテーマです。
その内容に愕然とし、怒りや悲しみを覚えますが、同時に希望の光を見せてくれるところが他の難民案件と大きく違います。
見ている間「あなたならどうするか?」「目の前の難民に何をしてあげられるか?」という問いを突きつけられているようで、背筋が伸びる思いでした。
駒井尚文(映画.com編集長)
国籍・人種・信仰などのフィルターで救いを求める人間を「選別」する、人権擁護を謳う国家の欺瞞性を情け無用であぶり出す。
一番の救いは本国ポーランドで大ヒットしたこと。
人々は自国の暗部に目を向けることを選択したのだ。
ISO(ライター)